平成23年3月に起きた東京電力原子力発電所事故は通常、「福島」原発事故などと必ず「福島」の文字が入ります。NPO里山再生では、この事故を呼称する際、「福島」の文字は使わず、3.11原発事故あるいは東京電力原発事故などと表記します。
なぜならば、この事故に「福島」という文字を付けるだけで福島県の県民の方の心を傷つけ、風評被害を後押しするからです。
福島県の方から聞いた話ですが、日本に存在する原子力発電所の中でその名前に県の名前がついているのは福島原子力発電所だけです。そのために、原発事故の話が出るたびに県の名前が出ることとなってしまいました。
被害者である福島県の方に対して、これ以上心の傷を増やさないためにも、この事故の呼称を変えたいと思います。
皆様のご理解をお願いいたします。
里山を再生する・放射性セシウムから里山を守る・・・簡単ではありません。
平地であれば、土木機械を使って比較的簡単に表土を削り取り空間線量を下げることができます。
里山森林ではそうはいきません。
表土に降下した放射性セシウムをどうするか?落ち葉に付着したものはどうするか?樹木や下草に付着したものはどうするか?樹木への吸収をどう食い止めるか?コストも考えると、まだ、決定版と言える方法は存在しないのです。
しかし、何もしないのでは事態は一向に良い方向には向かいません。
私たち、NPO里山再生では完璧ではないかもしれませんが、一歩ずつでも里山の除染を行い、里山の環境保全を考えます。
里山を何もしないで放っておくとどうなるのでしょう?
樹木は日々成長します。
幹がだんだん太くなります。
そしていつしか、枯れて倒れる木が出てきます。
その木が占めていた枝や葉の部分は一時的に空いたスペースとなり太陽の光が差し込むようになりますが、いずれその部分には、別の樹木の枝や葉が生い茂ってきます。
また、別の木が枯れて倒れます。
同じことを繰り返して、いつしか里山は人が全く入れないような、倒木とブッシュと大きな木が生い茂る利用価値の少ない森林になってしまいます。
ちなみに、コナラが老木となると、そこに「ナラ枯れ病」という病気が入りやすくなることが知られています。
カシノナガキクイムシが運んでくる病気です。
このような里山は、二酸化炭素を吸収します。
が、吸収した量と同じくらいの二酸化炭素をそこに生息する動植物が排出しますので、プラスマイナスゼロに近くなります。
一方、もし、里山の木を定期的に伐採してしいたけ用原木に利用するとどうなるでしょう?
伐採された切り株からは新しい芽が萌芽して、新しい里山を作り出します。
この時に旺盛に二酸化炭素を吸収し成長します。
いわゆるカーボンポジティブですね。
伐採した原木を使ってしいたけ栽培をします。
林業者と原木しいたけ生産者と消費者の皆様が良い関係になる瞬間です。
原木にしいたけ菌を植え付けてから、しいたけ菌が成長する過程や、しいたけホダ木からしいたけ(キノコ)が生えてくる時に、しいたけは呼吸し二酸化炭素を排出します。
つまり、この一連のしいたけの生命活動は、全体としてみればカーボンネガティブです。
また、しいたけを採り終ったホダ木(原木からしいたけが収穫できるようになったものを特別にこう呼びます)は、しいたけ用ビニールハウスの暖房用燃料として使います。
この時に二酸化炭素を出しますので、しいたけ栽培全体としてはカーボンネガティブですが、先ほどのカーボンポジティブとプラスマイナスゼロで全体としてはニュートラルになります。
つまり、どちらでも、二酸化炭素の収支は同じニュートラルなのですが、里山を有効利用してしいたけ栽培をすれば、美味しい椎茸を食べることができて、中山間地の雇用を生み出し、美しい里地里山が保たれる分お得です。
ちなみに、原木しいたけ栽培では、冬場のしいたけ栽培用ビニールハウスの暖房用燃料に古くなったホダ木を使います。
化石燃料は使いません。
一見どちらでも同じように二酸化炭素を排出するように見えますが、実は違います。
古くなったホダ木は燃料に使っても自然の中で分解を受けても、二酸化炭素を排出しますので、どのみち排出するなら、燃料に使えば化石燃料を使用する分の二酸化炭素の排出を少なくすることができます。
(厳密に言いますと、古くなったホダ木を燃料として使う方が少しだけ二酸化炭素を多く排出しますが、化石燃料を使用しないメリットの方がはるかに大きいです。)
残念ながら、原木しいたけはあらゆる農産物の中で、最も放射線被害の受けやすい作物の一つでした。
そのために、今、原木しいたけ栽培に係る里山の伐採・萌芽更新が途絶えてしまう危機にあります。
これはそのまま里山の危機につながります。
また、里山の場合は、それ以外の場所と違って、放射性セシウムの循環が起こり、それ自体があまり外へは出ていかないことが言われています。
すると、どうなるでしょう?原木しいたけだけではなく、里山が育んでくれた、天然のきのこ、山菜などの森の恵みがこれからも長い間にわたって、放射能に苦しめられることになります。
では、里山の放射能汚染はどの程度なのでしょう?
しいたけ栽培用原木には放射性セシウムに関する「指標値」があります。
現在は、50ベクレル/Kgでこれを超える原木はしいたけ栽培用に使えません。
(一部例外があります)これは一般の農地の作付制限となる数字5,000ベクレル/Kgと比べると大変厳しい数字です。
しいたけ栽培に使える原木の分布をみてみると、北関東では原木しいたけ栽培に使える原木山は半分以下のようです。
では、里山は危険なのでしょうか?
そんなことはありません。
例えば、原木の値が50ベクレル/Kgの里山に入って空間線量を計った場合、たぶん0.06~0.08μワ3くらいです。
あるいはもっと低いかもしれません。
空気中の粉じんも少ないので、内部被ばくも考えなくてよいレベルです。
つまり、その数字を超えた里山や森林が危険というわけではありません。
ちなみにソウル市の空間線量は0.1~0.15μSv、特に空気中のラドン量が多いようですので呼吸による内部被ばくを考えなくてはなりません。
この数字と比べてみればわかりやすいかと思います。
では、なぜ原木の指標値は50ベクレル/Kgと厳しいのでしょう?
それは、一般食品の基準値100ベクレル/Kgという世界一厳しいとも言えるような数字にさらに安全係数を考えて決められた数字だからです。
私たち原木しいたけ生産者は消費者の皆様、あるいは流通関係の皆様のご協力を得て、原木しいたけの安全安心を担保しつつ、また、地元原木の有効利用を図り、また、里山の環境を守るために、NPO里山再生を立ち上げました。
放射線に対して正しく理解し、里山のより良い環境と食の安全を守るために活動していきたいと考えていますので、よろしくお願い申し上げます。
2021/09/25 | 2021年度 第1回 里山保全活動を行いました。 |
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2021/09/18 | 2021年度通常総会 書面決議により議案が可決されました。 |
2017/09/10 | 平成29年度里山保全事業実施計画書が出来ました! 興味のある方は事務局へご連絡ください。 |
2017/09/09 | 平成29年度通常総会行いました。 |
2015/11/02 | 2015年10月17日下刈作業を行いました。 |